概要

筑波大学Vision 2030

 本学は、複雑で従来の延長線上の考え方が通用しないこれからの社会では­­­­、信頼、とくに、TRUSTの語源どおり互いに委ねることができる「真の信頼」がすべての活動の基盤になると考えています。COVID-19は、ワクチンなどの資源の分配にあるような地域間の格差、富(所得)の格差、教育の格差、ジェンダーによる格差など、さまざまな「格差」の存在を浮き彫りにしました。そして、格差は「対立」や「分断」を加速させる一因になっています。その一方で、COVID-19の克服は、対立や分断を促すことのない、人類が同時に向き合う共通の課題となりました。世界の英知と国境を越えて集められたデータがワクチンの開発を加速させました。ワクチン開発の成功は、個人と個人、個人と組織あるいは社会だけではなく、社会と社会、組織と組織、国と国までを含めた信頼の関係によってもたらされています。
 本学は、この信頼を“GLOBAL TRUST”と呼ぶことにしました。“GLOBAL TRUST”は、ワクチン開発の例からもわかるように、何事に対しても誠実に公平に向き合い全うする力をもち、同じ価値観をもっていると理解されることではじめて生じます[1]。倫理観、他者やその社会への共感に基づく責任感、信頼性を意味し、社会的な協力や協調の礎をなすものです。本学のルーツである高等師範学校校長であった嘉納治五郎が唱えた「自他共栄」と「精力善用」に通じるものです。

 

 本学は、“GLOBAL TRUST”の創出を目標として掲げ、この目標を達成するため、本学が目指す大学の姿とその実現に向けた基本的な方針を「筑波大学Vision 2030」としてまとめました。そこでは、建学の理念に謳われた「あらゆる意味において開かれた大学」の意味をあらためて見つめ、「社会とのエンゲージメントを深め、学生を中心とした大学を取り巻くすべてのステークホルダーとあるべき未来社会を共創する大学」と捉え直しています。さまざまな研究機関や企業が集まる筑波研究学園都市(Tsukuba Science City: TSUKUBA)は、教育、研究、そして社会貢献の大規模な挑戦的社会実験の場(チャレンジフィールド)として最適な環境といえます。スーパーシティ型国家戦略特区にも指定される恵まれた環境を活用しつつ、確固とした伝統と未来を見つめた革新の精神を心に、TSUKUBAの地から、すべてのステークホルダーの夢の実現を加速させたいと考えています。
 筑波大学Vision 2030は、

  • 開かれた大学Vision
  • 教育Vision
  • 研究Vision
  • 社会との共創Vision

の4つで構成しています。
 教育Vision、研究Vision、社会との共創Visionは、大学のミッションである教育、研究、社会貢献それぞれに対応するもので、開かれた大学Visionは、それらの基盤となる、筑波大学そのものの在り方を示すものという位置付けです。社会との共創は、筑波大学の基本的性格の新たな捉え方に応じて、従来の社会貢献を発展的に再定義したものです。
 筑波大学Vision 2030は、教育、研究、社会との共創の各Visionを達成するための重点戦略とアクションプランをお互いに交差させながら実現し、さらにより高度なものへ昇華させることで、“GLOBAL TRUST”の創出を実現することを意図しています。


[1] 東欧における侵攻をはじめとする国際的な紛争の解決には、相互理解とともに“GLOBAL TRUST”が必要不可欠であることに異論はないと考えます。

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