Visionインタビュー:ジェネラリストとしての大学職員の仕事と大学の課題 西村法子さん④

法人職員採用試験を経て入職する大学職員にはジェネラリストとして業務に当たりますが、その際にどのような人を参考にして、どのような仕事の姿勢を身につけるのでしょうか。入職4年目の西村さんから引き続きお話を聞きました。そこからは、大学がまさに取り組まないといけない課題も見えてきます。

――仕事をする上でのロールモデルとか模範にしているような方はいるのでしょうか?

これまで関わった職員の中で、仕事のやり方の点で参考になったのは、以前の上司です。その人は、自分の職務を越えて、直接業務で担当するのではないとしても自分がその立場だったらどうするかを常に考えていました。「私は今この課でこういう業務をしています」で終わりではなく、もっと大局的に考えるというのは、異動の多いジェネラリストとして働く上で大事なことだと思いますし、年次に関係なく求められると思います。

――そういう見方で業務に当たることが、ジェネラリストとしての仕事の質を高めるために重要なのでしょうね。そのような、自分の職務の範囲を越えて大局的・俯瞰的に見て考える事例をもう少し教えてください。

例えば取材依頼を受けたときに、マニュアル通りに淡々と捌いていくだけでなく、このトピックはこういう切り口で考えるとあんな見方もできる、その場合はどんな手続きが必要になるか…というように考えていきます。ある業務を多角的に捉え、それを実際に行うなら誰とどう進めるかというように、派生しうることを可能な限り考えるわけです。特に広報では、メディアなどの外部からの要望と、学内の各部署の事情とをうまく汲みながら進めていく必要があるので、どこまでやれるかのせめぎ合いで頭を悩ませることもあります。マニュアル通りでもある程度事は進むのですが、それぞれの立場への理解があるかどうかは、仕事の質にも大きく関わってくると思います。

――それが、仕事のやり方としてジェネラリストとしての職員が採るべき道を示していると感じられたわけですね。

課題解決という本質に向かうにはどういうアプローチがよいのかと考えることが、どこの部署の職員でもやるべきことと思います。自分の担当範囲を意識しつつ、それでもこの場合にはこう考えるという姿勢や気持ちは必要と感じました。自分の担当外のことはあまり考えないようにしている人もいるかもしれませんし、考える余裕のない時も自分自身ままありますが、できる限り「緩やかに考えを泳がせておく」というマインドセット――それは仕事では直接には現れないかもしれないけれども――がジェネラリストに必要な考え方ではないかと思っています。

――ほかに気になった職員や教員はいますか?

広報局の次長は、大学職員としての型にはまらず、凝り固まった思考をほぐしてくれる存在と思います。

――放送局出身で、ジェネラリストというよりスペシャリストという方ですね。

影響を受けたのは、技術的な部分よりも考え方ですよね。「もっとこうしたらいいんじゃないの」というのがごく素直に、自然に出てきます。大学職員として業務にあたっているとどうしてもいろいろな制約に直面してしまいます。ともすると、やりたくても、やれない理由を先に考えてしまいがちです。実行する方法は後々考えていくとして、まずはシンプルに「それ、やればいいんじゃない」と提案できる、そんな素直さは大学職員全体にもっとあってよいのではと思います。

――その「素直さ」は現在の組織の構造や仕事のやり方だと鈍ってしまうものなのでしょうか?

それはあると思います。規則に準じて仕事を行うのが当然ですし、他部署との連携を考えるとここまでやると申し訳ないなどという意識が働いてしまい、やってみたいけれど現実的ではない、それで頓挫してしまうということは往々にしてあるからです。特に、大学という組織は、中小企業の集合体に例えられるほどに複雑で、意思決定にも時間がかかる部分があると思います。

――そこを突破していくのがこれからの大学に必要なのか、それを進めると業務がパンクしてしまうから避けるべきなのか、どうでしょうか?

まずは回すべき仕事がきちんと回っていて、そこにプラスアルファとして自由な発想が出てくると思うので、必要なラインは最低限満たされないといけないでしょう。組織的に変えていくのはハードルが高いかもしれません。職員の一人ひとりに聞けば「こういうことをやってみたい」と出てくるとは思うのですが…

――それを実行できる風土をどう作るか、実行できる時間をどう作るか、それが大学にとって、また大学経営推進局にとっての問題の一つだと私も感じます。

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