Visionインタビュー:広報局での報道担当という仕事 西村法子さん③

大学での広報と言うと、新しい研究成果を世にアピールしたり、入学者募集のため高校生を相手に説明会をしたりというイメージがあるかもしれません。人事課の次に配属された広報室(広報局)で、いま西村さんはどのような業務に携わっているのか、引き続きお話を聞きました。大学職員の仕事の具体的な様子が目に浮かぶようです。

――入職して人事課での仕事を始めて1年半で、異動の内示があったのですね。それは希望を出してのことだったのでしょうか?

実は特に出していませんでした。多くの新人が配属後2年間か3年間は同じ部署ですから、私もそれくらい人事課にいるものだと思い込んでいました。ですので、少し驚きました。

――それで広報室(現:広報局)に異動して、でも同じ建物での垂直移動だったのですよね(笑)。

はい。何階分か降りただけなので、環境としてはあまり変わりませんね。

――広報ではどのような仕事になったのですか?

報道担当の仕事がメインです。メディアからの取材依頼や問い合わせへの対応、定例記者会見の運営などをしています。また、他の広報関連の業務として、広報誌を作成したり、学内風景やイベントの写真撮影をしたりしています。公式インスタグラムの中の人もやっています。

――毎月決まっているルーティンは、月末にある学長の定例記者会見ですか?

はい。日常的には、教員や学生への取材依頼や問い合わせが頻繁に来ますので、それに対応しています。入試にフォーカスしたものは入試課や同課のアドミッションセンターが担当しており、広報局では、大学全体の取組や教育研究、産学連携を扱ったものなどを広く発信しています。新しい研究成果をマスメディアに発信するのはサイエンスコミュニケーターの教員、筑波大学のウェブサイトやSNSにアップロードするのはメディアコンテンツ担当というように、広報局の中で分担しています。

――取材の依頼はどのように来るのですか?

社会情勢や事件などで「この先生に解説してほしい」というタイムリーな依頼が数多くあります。去年から増えたのが、やはりウクライナ情勢に関する取材です。他にも、医療・健康、スポーツ、教育、法制度、防災などがあります。そうやってマスメディアに本学教員が取り上げられると、このテーマはこの先生に聞けばいい、といったのが次第に固定化されがちですが、筑波大学には多様な学問分野の教員がいますから、もっと幅広く出るようになるといいなと思います。

――最近はどのようなテーマで取材依頼が来ましたか?

最近は豪雨など自然災害が頻繁に起こっていますが、線状降水帯や地震に関する知見であれば生命環境系の先生、犯罪に関しては、社会学や犯罪心理学の観点から人文社会系や人間系の先生につなぎます。マスメディアからは、教員を指名した上でつないでほしいという依頼がほとんどですね。広報局の報道担当として、その仲介の役割を担います。ニュースによっては、その日のうちにテレビやラジオに出演してほしいという話が来ることもあります。逆に中長期にわたる番組監修や寄稿といった依頼もあり、そういう場合は先生には兼業として手続して携わってもらいます。他にも、取材ではなくロケの依頼も受けることがありますね。

――ロケの依頼は撮影場所として大学を使いたいというようなものでしょうか?

それが多いですね。テレビですと、企画書の趣旨によっては「これは大学で撮らなくてもよいのでは」と思うこともあります。特に、筑波キャンパスは広大で自然豊かですので、映像制作会社からの依頼も多いです。ただ、大学での撮影となると、やはり学術的・文化的な目的で使ってもらうのが前提ですから、そのような趣旨でなければ、地元のフィルムコミッションなどをあたってもらわざるを得ません。

――そうすると、いろいろな問い合わせをさばいていくのが日々の仕事になるのですね。

はい、お問い合わせ窓口のようになっています。(苦笑)

――それはルーティン的とか定型的な仕事ではなくて、人事課で担当していた仕事とだいぶ違うのでしょうね。

広報では日によって業務の量や内容が変わります。突然に事案対応が必要になることもありますので。予測がつかないという点でも、かなり異なりますね。人事課であれば「来月の今頃はこれをしている」とわかっていて、自分の業務の担当範囲もわかりやすいですから。

――普段つながりのない人も相手に仕事をするというのは広報の方が…

圧倒的に多いですね。匿名の個人が意見を寄せてくることもあり、お問い合わせ窓口として受け止め、必要ならば関係先につないでいきます。

――何か具体的なスキルというよりも、その人の幅広い能力が問われるような感じですかね。

渉外として調整する能力だけでなく、メンタル面での適性も時に問われると思います。やはり負荷もありますから。

――仕事としては、一般にイメージされる広報よりは渉外に近いのでしょうね。大学のことを外に知らせているというよりは、外から来る様々な問い合わせを交通整理して、学内の適切な教員や部署につないでいくという。

現状は、それが報道担当の主な仕事になっているのですが、最近は、今年の10月に本学が開学50周年を迎えることもあり、その関連の広報業務にも加わっています。これは問い合わせを受けて対応するというより、こちらから動いていく積極的な広報という側面が大きいです。放送局出身の次長が広報局に入職し、プロジェクト型の仕事のミーティングなどが各段に増えました。例えば、共通の課題について各担当でどのようなリソースを持っていてどうすればいいか、提案を持ち寄って議論したりします。他に、外部のスタッフを入れて制作するYouTube動画にも関わっています。構成や撮影の流れを考えたり、シナリオやテロップを書いたりもしています。若手であってもさまざまな仕事の機会をもらえており、日々刺激を受けています。

――元々の報道担当からは業務の幅が広がっているのですね。
かなり広がりましたね。業務量は当然増えたのですが、広報の仕事のあり方として確実に幅が広がっています。

――そこには何かのスキルアップとかを感じますか?

はい。わかりやすい文章の作成、写真の撮影や編集、デザインといった部分は、元来好きで向いていると感じることでもあったのですが、仕事として実践する中で鍛えられました。また、目に見える技術だけでなく、考え方という点でもバージョンアップしたと思います。

――仕事についてのそのような見方や考え方というのは、仕事をしながら身につけるのか、上司から学ぶのか、どのようになっているでしょうか?

両方です。今回の50周年プロジェクトについて言えば、学外出身の次長が入られたことで、外から見た筑波大学という新鮮な見方を知りました。大学のこの仕組みや資料は外から見ると理解しづらいとか、こういうところをもっと筑波大学はアピールした方がよいとか。大学の中にいるとわかる部分が外から見るとそうではないということや、反対に盲点だったことが実は大学の美点だった、といったことが結構あるのですよね。広報に携わる職員としては、学内の関係者でありつつも、一歩離れて大学を見ないといけませんから、その見方がとてもクリアになりました。

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