西村法子さんが最初に配属された部署は、予想とは少し違っていたようです。そこからどのように大学職員としてのキャリアをスタートさせたのか、引き続いてお話を聞きました。
――筑波大学職員への採用内定が決まって、2020年4月に入職されたのですね。

内定式は前年の10月1日だったのですが、配属先が通知されたのは、辞令交付のあった4月1日でした。筑波地区の新入職員が集められて、配属先の書かれた辞令を受け取るのです。
――一般企業とかとそんなに違わないイメージですかね。それで人事課となって、どのように思いましたか?
学生の目線からすると大学の事務は教務や学生支援がイメージしやすく、また、若手はそういった現場を先に経験するのではないかと思っていたので、最初から法人部門に配属していただいたのは、多少意外にも感じました。コロナ禍での入職ということもあり、入職当日は新卒採用者が集まっての研修はなく、上司から渡された資料を見ながら早速仕事に取りかかりました。今は対面での研修が復活し、学長をはじめとする役員からのお話があったり、さまざまな部署の部課長からそれぞれの部署での業務の概要について説明を受けたりするようです。
――2020年と言えば、やはり新型コロナウイルスで年度のスタートが大変でした。授業の方は全てオンラインになってその準備のため4月最終週から開始となりましたが、事務系職員ではそんな猶予はなかったわけですね。
はい。通常は対面での研修がありますが、この年は仕事をしながら資料やオンラインで勉強するという形でした。今はこの業務スパンのこういう時期にいるからこういう仕事をしなくてはいけなくて、あなたはここを担当するのですよ、という業務のアウトラインを説明され、大まかなイメージを掴んでから仕事を進めました。
――大学には年間のスケジュールのようなものがあって、この時期に○○があるからその前にこの準備をするというようなタイムラインがあり、そこに並んでいる仕事をこなしていくようなイメージがあります。
教務の年間スケジュールとは違うのですが、人事課はそこで動いているサイクルがあり、最初は目前の業務のルーティンを覚えていくだけで精一杯でした。
――どういうルーティンだったのですか?
人事課では給与支給の担当だったので、基本的に月単位のスパンでした。人事課の他の係や組織・職員課などから異動情報や勤務時間数、給与の等級といった情報が入り、そこからそれぞれの教職員の月の給与を算定して支給します。給与支給後は、人件費の計上や予算の振替、社会保険料の納付などを行います。ここまでが大まかなルーティンです。
――1ヶ月サイクルの同じ仕事でも、いかに間違えないで適切に給与を算定して支払うかが求められたということですね。このように間違えないことが大事という業務は、いわゆる「面白くない」仕事と思われがちでしょうが、やりがいとかはあったのですか?「あの有名な○○先生の給与も私の仕事があって出るんだ」とか(笑)。
この仕事では、間違いのないように、いかに情報をきちんと処理し整えるかが問われます。特に、個人の給与に関することですので、当然ながらデリケートで1件1件に非常に気を遣います。ただ、そうした緻密な業務をこなしながらも、その先にいる約5000人の教職員の日常を維持することにつながっていると思うと、気が引き締まりました。入職1年目の夏には、コロナ禍の影響で経済的な支援が必要となった大学院生への臨時の給付金の支払い[註]があり、各学生のデータの取りまとめに奔走したのを覚えています。
――定型的な仕事を飲み込むのは2~3ヶ月とかでできても、トータルでの数は膨大で大変だったのですね。
はい。あと年末調整もありますし。
――さすがにそれは大変ですね。大学職員の仕事と言っても多様で、生身の人に応対するより数字やデータに向き合って確実にこなす、それが例えば従業員にきちんと毎月の給与が支払われるという貢献になり、自分がきっちり回した仕事が具体化されてやりがいを感じるような人もいるでしょうし、学生などに現場で関わっていたいという人もいるのでしょうね。
はい。人によって、向き不向きややりがいを感じるポイントは異なるでしょう。大学職員の仕事は定型業務が多くを占めますが、大学に自律的な経営が求められていることもあり、新たな業務も生まれていると思います。異動を経験しながら、自分に合う仕事を見つけることができるのではないでしょうか。
――そうした個々の業務への適性の合う、合わないは考慮して配属されるのでしょうか?
周囲には多様なキャリアパスを歩んできた職員がいます。中には、経理畑や研究畑といった、同じ分野での異動をする人もいます。そのような人はやはり、適性を見込まれての配属になっているのだと思います。私の場合は、最初の配属と今とは全くタイプの異なる業務ですが、若手のうちはさまざまな部署で経験を積んでほしいという意図があると聞きましたので、そこは前向きに捉えています。自分に本当に向いている仕事かどうかは、やってみないとわからない側面もありますが、どちらの仕事も結果的にミスマッチなどではなく、早い段階で仕事を覚えてこなせるようになりました。
――実際に配属されてもしミスマッチだったら、どうすればよいのでしょう…
同期でも先輩でも上司でも、まずは話せる相手がいることが大事だと思います。困りごとがあった時に業務をサポートしてくれる人、そこまででなくとも、他部署の異なる立場から客観的な意見をくれたり、フランクに話を聞いてくれたりする人がいるだけで、物の見方が変わるきっかけにもなります。
――そのような相手に出会えるかどうかが、入職後にきっと大事なことになりますね。それもあって大学経営推進局では、年度初めの研修の時期に合わせて新任教職員向けにお互い話してつながりを作るイベントを初めて今年開催しました。このような取組はこれからも続けていきたいと思っています。
- 筑波大学への入職と3年間を振り返って 西村法子さん①
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[註]2020年度のコロナ禍における筑波大学の大学院生への経済支援は、所定の研究に対するRA(リサーチ・アシステッド)の給与という形で行われたため。