Visionインタビュー:フロンティアから戻って教育改革の支援へ 元村彰雄さん③

南極という極限のフロンティアでの業務にもチャレンジした元村彰雄さん。筑波大学という日常の世界に戻ってきてからは、どのような仕事を経験しキャリアを積んでいったのでしょうか。引き続きお話を聞きました。

――南極から筑波大学に帰ってきた後は、どのようなお仕事をされたのでしょうか?

筑波大学に戻った2004年の4月に、ちょうど全国の国立大学が法人化されました。戻った部署は当時の総務・企画部企画課(今の企画評価室)で、その頃は法科大学院の準備(2005年開設)が進行中でした。2004年の秋頃には学群の改組再編の全学的な検討も開始されました。これは筑波大学の第1期中期目標・中期計画(2004年4月~2010年3月)に掲げられた施策で、法人化後を見据えて学内で取りまとめられた「筑波大学の将来設計について」(2003年3月)において、その必要性が提言されたものでした。

――開学以来の教育組織を大きく再編するものでしたね。

第一学群、第二学群、第三学群という「ナンバー学群」から、学問分野の名称を冠した学群編成に移行したわけですが、組織編成の在り方については今もいろいろな意見があると思います。当時も様々な意見があって、議論が重ねられた結果として今の形がありますし、もう少し遡れば、改組再編の必要性が提言されたのにもそこに至る理由がありますよね。過去のことにしても未来のことにしても、何のために、という目的を突き詰めて考えることが大切だと思います。ともあれ、南極から戻ってきて最初に関わった大きな業務が学群の改組で、2007年に新学群がスタートしました。

――企画課にはいつまでいらしたのですか?

2008年に企画室に改編され、2012年の6月末までトータルで8年3ヶ月いました。結構長い方だと思います。その間に主任、係長への昇任がありました。2012年の7月に教育推進部教育機構支援課に異動し、そこで主幹、課長を拝命して今に至ります。教育機構支援課の中では10年が過ぎた頃ですね。

――それも長いですよね。

長いと言えば長いですが、あっという間という感もあります。数年がかりの新しいことに関わる業務が多かったので、それらに一生懸命取り組んでいるうちに数年、また数年と(笑)。

――その間に、関わる教員も入れ替わっていくという。私は、こういう学務の仕事は教員でも職員でも一定期間携わる必要があると思っているのですが…

私見かもしれませんが、事務職員から見て昔よりよくなったと言えるのは、教育推進部の業務に関してより深く教職協働ができる体制ができたということです。例えば委員会方式だけだと、教員と事務職員の関わりは会議の前後だけになりがちです。そうではなくて、日頃から一緒に全学的な視点で教育のことを考える教員が身近にいて、一体となって業務をする体制があるというのはそれ以前とは大きく違うところです。

――私はこのあたり重要だと思っていて、職員側でのジョブローテーションで継続性・専門性が薄まるということは、一定期間携わる事務職員がいることで対応されていそうなのですが、教員側が各組織持ち回りで委員長を出すというようでは、やるべきことが進まずに事なかれ主義で終わってしまう心配もあります。そこで今は、特定任務の教員がいてきちんとコミットメントしてもらう体制になってきているということでしょうか。

はい、2020年に教学デザイン室と教学マネジメント室ができてから、そうなっています。他の委員会の方式もだいぶ工夫がされていて、今期の副委員長が次期の委員長を務め、今期の委員長が次期の副委員長としてサポートするといった形にして継続性が取れるようにしているものもあります。委員会方式が適しているものもあると思いますが、教育機構支援課の業務を進める上では、日頃から教育改善や教育改革のことを一緒に考える教員が近くにいることが大きいと思います。委員会前後の関わりだけでは、なかなか常日頃から課題を共有して解決していこうというスタイルにはなりませんので。

――やはり教職協働というのが教育推進部や教育機構支援課でもキーワードだと思うのですが、一緒にやりやすい教員とそうでない教員がいたりしませんか?

それはお互いに人ですから、ありうることです。しかし、教育推進部で関わっている教員はみな筑波大学の教育をとても大事に思っていて、それを学生のためにもっとよくしたいという思いの教員ばかりなので、共通の目標があって一緒に進めることができているように思います。

――大学によっては職員と教員であまり仲がよくなくて教職協働は容易でないというところもあるようで、筑波大学では少なくとも一定の領域では教職協働が進んでいるというのは胸を張ってよいのだと思います。

そうですよね。教育でそれができるのは、意見の相違があっても「学生のため」という目的が一致しているからだと思います。学生のために何がよいのかを追求することがいろいろな意見を収斂させていく時の共通のよりどころとなり、職員と教員の役割分担を越えた共通の目標となるのだと思います。

――Visionインタビュー第1シリーズに登場いただいた土居さんへのインタビューでも、「なぜ大学で働くのか」となったときに、学生のためになるよい教育をするという大学の目標に大きな魅力を感じたという話がありました。その魅力を教員も職員も共通に感じて、この大学で仕事をしているのだと思います。共通目標があるというのはとても重要で、そこに一定の協力体制があることは、仕事のやりがいにもつながることかもしれません。

次の記事 自律的・主体的なチームワークで難題に挑む 元村彰雄さん④(近日公開予定)

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