個々人の能力とチームワークを掛け合わせて業務に当たることは、どんな職場でも求められることでしょう。教育機構支援課長の元村彰雄さんから業務の様子をお聞きすると、インタビュー②での南極観測隊の経験が反映されているようにも感じられます。チームで一丸となって大学の難題に挑む姿をご覧ください。
――企画室を経て教育機構支援課に専門職員(係長相当)として移ったとき、業務の体制はどうだったのでしょうか。

最初は調査やFD(ファカルティ・ディベロップメント)、国の公募事業への申請、学内公募型プロジェクト支援といった業務の担当になりました。その時は非常勤職員の方と2人体制でした。
――最初は今のように部下が多かったわけではないのですね。
そうですね。その頃は課に担当が3つあって係長相当の職員も3人いましたので。その後徐々に課の体制も変わっていって、カバーする業務の範囲も広がっていきました。
――その際には、何か研修などあったのですか?
階層別研修や情報セキュリティ、コンプライアンスなどの研修は全学的に行われていますが、所属組織独自の研修はありませんでした。課の業務に関しては、前任者からの引き継ぎと実際の業務を進めながら学んだり改善したりということが中心になります。
――今の教育機構支援課では何人の部下がいるのですか?
常勤職員8人と非常勤職員2人です。課の業務は教学デザイン関係[1]のチームと教学マネジメント関係[2]のチームに大きく分かれ、さらにマレーシア分校や国の公募事業への申請、組織整備、各種調査等の業務があります。2つのチームのうち、教学デザイン関係の業務総括を私が、教学マネジメント関係の業務総括を主幹(課長補佐相当)が担当しています。課長、主幹にもそれぞれ固有の担当業務があります。
――元村さんは、課長としてさらに2つのラインの両方を見ないといけない、と。
そうですね。私が主幹のときは主幹が2人いて教学デザイン関係と教学マネジメント関係をそれぞれ見ていたのですが、主幹の数が減ったので以前の主幹の担当業務の一部を課長が担う形になっています。
――チュートリアル学修など教学デザイン関係も、教育の質保証など教学マネジメント関係も、どちらも大学全体の教育にとって重要な業務ですが、バランスはどのように取るのでしょうか?どちらかの業務が過多になったときに分担を調整するとかはありますか?
各チームが年間のスケジュールを立てて、繁忙期も想定して計画的に業務を進めてくれていますし、相互の協力も積極的に行ってくれていますので、通常業務の範囲内であれば、業務分担の変更が必要になることはありません。
――それができるのは、「強い」職員さんが多いからでしょうか?
そう思います。本当に素晴らしいメンバーです。担当業務の全体像や要点を掴む力、正確さ・迅速さ、情報の収集・整理・活用力、語学力やICTスキル、主体的に取り組む姿勢、日々の改善の工夫、自己成長力など、私自身も一緒に仕事をしていて学ぶことが多くあります。ですから、仕事そのものは日々細かい指示をしなくても進んでいきます。仕事の進捗状況も、電子メールの同報で共有されるので各チームの動きがわかります。メールで共有されていることでも大事なことは直接報告してくれますし、気になることがあれば私から声を掛けます。教学デザイン関係も教学マネジメント関係も難しい場面が多いので、要所要所で進め方や対応の仕方を相談しますが、基本的には各チームが主体的に業務を進めています。
――いわゆるマイクロマネジメント的なことはしないし、しようとも思わないわけですね。
それをしてよい結果にはならないでしょう。みな個性豊かで一人ひとりが主体性をもって、また話し合って協力しながら業務を進めています。その中で互いに学び合うことも多いと思います。状況を見ていて気になるところがあれば声を掛けますが、うまく回っているところに介入しようとは思いません。
――難しい場面とは例えばどのようなものでしょうか?
全学的な施策を進める際には各方面との調整が必要になりますが、その過程では多様な意見がありますし、当初想定していた工程どおりに進めるのが難しくなることもあります。それを今後どう打開していくか、まず課の中で話し合って問題点や対応の方向性を整理し、教学デザイン室長や教学マネジメント室長と相談して、対応案や見直し案を作成していきます。
――そうした難しい場面を打開するために必要なことは何なのでしょうか?
難しい質問ですね。まずは行き詰まっている状況を解決するための方法を担当者と話し合って、考えられる選択肢の幅を広げていきます。それは自分の中から出てくることもありますが、担当者との対話や相談の中で生まれてくることの方が多いです。相談している中で私の中でも気づきがあるし、担当者にも気づきがあり、その中で考える選択肢が広がっていきます。そして、この選択肢を選んだならこうなるよね、こういうポイントがあるよねと議論していくプロセスを、担当者と一緒にやるわけです。自分が答えを持っているわけではないですから、何が課題か、どう解決の方向性を定めればよいのかは、担当者と話す中でいろいろ出てきて発散しながら、やがて収斂していきます。
――チームでまさにダイバージェンス(発散)とコンバージェンス(収束)というプロセスによって業務を進め、難しい場面も打開していくわけですね。大学職員の仕事にクリエイティビティを見るような気がします。
[1] 教育改革の方針や計画の立案を行う教学デザイン室に対応している。土居新治さんのインタビューでも出てきたチュートリアル学修も、教学デザイン室のチュートリアル教育タスクフォースで企画・設計が進んでいる。
[2] 教育の質保証と質向上を支援し、ファカルティ・ディベロップメント活動の推進なども担う教学マネジメント室に対応している。
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